L ID

      人材

      私を成長させた「博士論文」

      サムネイル

      一人前の研究者としてのスタートラインに立つために、誰もが通る博士論文執筆という道。その経験は、研究者のキャリアにどのような影響を与えるのでしょうか。この特集では、博士の研究の中でも、特に「博士論文」の執筆という経験に焦点を当て、そこから得られる研究者の気づきと成長について考えてみたいと思います。 ※本記事は2019年冬号「incu・be」vol.47に掲載されたものです

      タグ

      博士論文を書いて、良かったこと、成長したことは?<博士論文執筆に関するアンケート調査>

      博士論文を書く経験について考えるにあたり、少数の個人の経験談のみでは特殊性が高くなることが懸念されます。そこで博士号取得者を中心にアンケート調査を実施し、博士論文執筆に関する見解を広く集めることで、研究者にとってこの経験がどのような気づきにつながり、どのように成長をもたらすのかについて考えてみました(回答人数:博士号取得者62名+修士号取得者・大学院在学者51名)。

      ※本調査は、2019年10月16日から同11月7日の期間に、インターネット上にて実施した。回答した博士号取得者62名のうち、博士号を取得して1年未満が6.5%(4名)、2~5年目が43.5%(27名)、6~10年目が32.3%(20名)、11年目以上が17.7%(11名)であった。博士号取得者の所属は、民間企業・官庁61.2%(38名)、大学や国立研究機関37.1%(23名)、不明1.6%(1名)であった。専門分野は自然科学系57名、社会科学系2名、人文科学系1名、学際領域(学術・芸術工学)2名であった。博士号未取得者については、現役大学院生が33名、修士過程修了後大学院以外に所属している者が18名であった。 調査結果詳細: https://lne.st/2019-12-01-incube-vol47-survey/

      複数の研究を一編の論文にまとめる経験に価値がある

      Q.1 博士研究の中で、特に博論を書き上げたことは、自分にとって良かったと思いますか

      「そう思う」の回答理由(抜粋)
      ・複数の投稿論文がある中で、その集大成として取りまとめる機会として良かった
      ・俯瞰して研究をまとめると、自分が本来何をしたかったのか、何をやりとげたかったのか、どのような道筋を立てたかなどを再認識できた
      「そう思わない」の回答理由(抜粋)
      ・通過点のひとつであった

      俯瞰的視座と、研究ストーリーの構成力を獲得

      Q.2 博士研究の中で、特に博論を書くことを通して、自身が成長したと思いましたか

      成長したポイント(抜粋)
      ・学問を学び、論文にまとめることで、その過程を包括的かつ俯瞰的に分析できた
      ・複数のテーマを一つのストーリーにまとめる考え方のトレーニング機会になった

      ストーリー構築の中で得た俯瞰的視座が気づきをもたらす

      上の設問と併せて、「博士論文を書くうえで、一番大切なことは何だと思いますか」という問いを博士号取得者と、修士号のみの取得者及び修士課程在学者(51名)に対してそれぞれ尋ねた結果、「俯瞰」というワードは博士号取得者のみから得られました。また、博士号取得者からは、俯瞰の結果として「自身の研究の意義やオリジナリティの認識」「研究者としての軸」の発見があったという回答も得られました。

      これらの回答から、私たちは「複数の研究をストーリー化して博士論文にまとめることを通して俯瞰的視座を得る経験が、研究者にとっての成長につながる気づきや発見をもたらすのではないか」と仮説を立てました。

      リバネスでは、この仮説を踏まえて3人の研究者にインタビューを行いました。それぞれの研究者は自分の研究分野をどのようにして俯瞰するに至ったのでしょうか。そして、そこで得た気づきは博士号取得後の研究者としての仕事や生き方にどのようにつながっているのでしょうか。

      (1)横浜国立大学 先端科学高等研究院 特任教員(助教)稗貫峻一さん「ゼロに立ち戻り、問題提起する大切さ」

      横浜国立大学 先端科学高等研究院 特任教員(助教)稗貫峻一さん
      横浜国立大学 先端科学高等研究院 特任教員(助教)稗貫峻一さん/2015年横浜国立大学大学院環境情報学府環境イノベーションマネジメント専攻博士課程修了。博士(環境学)。博士課程では、ライフサイクルアセスメントと産業連関表を用いた再生可能エネルギーの技術導入に伴う環境・社会経済分析の研究に取り組む。同年より横浜国立大学リスク共生社会創造センター研究員を経て現職。現在はリスクアセスメントの分野で、“社会総合リスクアセスメント” という科学技術の導入によるリスクの正負両方の影響を評価するような全く新しいコンセプトの研究に取り組んでいる。博士論文のタイトルは「産業連関表を用いた再生可能エネルギー技術導入に伴う環境・社会経済分析」

      製品や技術の製造・使用・廃棄の一連のサイクルから生じる環境負荷を定量的に評価することをライフサイクルアセスメントという。それを活用し、再生可能エネルギーの技術導入が環境や社会経済に与える影響を評価する研究で博士号を取得した稗貫峻一さん。学術誌に掲載できた研究成果を博士論文にまとめようとしたとき気づいたのは、ゼロから自力で研究の問題設定をすることの重要性だった。

      手法を確立し、打ち立てた成果

      土木・建築学を学部で専攻していた稗貫さんは、工学的に良いとされている技術がなぜ普及しないのかということを考えていた。水素エネルギーや再生可能エネルギーのような利用時の二酸化炭素排出が少ない点で環境に配慮した技術であっても、その導入による直接・間接的な影響が定量的に理解されないなど、導入に多くの課題がある実態を知った。

      それが、ライフサイクルアセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)の研究に興味を持った きっかけだ。分野を変えて、製品や技術のライフサイクルを含めたシステム全体の環境性や経済性の評価研究を始めた。目の前の直接的な環境負荷だけでなく、奥に隠れた間接的な環境負荷をも追跡するということだ。

      その後、博士課程では、LCAの手法に、産業間のお金の流れを表す産業連関表を用いた分析を組み合わせていった。日本全体において、環境のほか、雇用やコストといった社会や経済に関わる影響を総合的に評価する手法を開発したのだ。

      その分析手法を用いて、日本における再生可能エネルギー技術の総合評価の実証、さらに将来のシナリオ分析に関する成果を学術誌に掲載することができた。これは、日本LCA学会や日本エネルギー学会で高評価を受け、稗貫さんの博士論文を充実させるものになった。

      自身の視点から研究の問題を設定する

      博士論文の執筆を意識し始めると、研究における自分の視点を考えるようになった。分析手法は研究室の研究を引き継いだ面が大きい。

      「確かに自分で考え、手を動かしてきた研究成果ですが、自分の視点から、どのように問題設定をし、どのような分析手法を選択したかということが研究者として重要だと自覚しました」。

      独自の視点の重要性を意識した稗貫さんは、業績が取れた研究成果だけで博士論文にする考えを捨てた。博士課程への在籍を半年延長してでも、自分がゼロから組み立てた研究を博士論文に加えることにした。研究を振り返り、思い当たったのは自治体へのヒアリングの記憶だ。

      自治体が新しい技術の導入を考えたとき、その地域にどのような影響があるのかを具体的に知りたがる。しかし、現存のモデルでは地域にフォーカスした結果を得られない。稗貫さんは、地域における再生可能エネルギーの導入による、域内でのお金の流れを分析するためのモデル構築に取り組むことにした。

      それは、技術の導入に伴う、域内の環境影響及び社会経済影響を評価できるように地域産業連関表とLCAとを組み合わることだった。これまでの研究では日本全体のモデルを扱っていたため、博士論文のストーリーに地域での研究を組み込むことに苦労した。

      それでもゼロから研究を組み立てると覚悟を決めたことで、「自分の視点で問題設定して博士論文内で一貫した論述をすることが、1人の独立した研究者として生き残る力になることがわかりました」と語る。

      技術と社会の新しい関係を提唱する

      現在、稗貫さんは新しい技術を社会実装するためのリスクアセスメントの研究に取り組んでいる。従来のリスク分析は、技術の経済性や安全性を評価するものが主流であった。稗貫さんらの研究グループでは、「リスク共生」という新たなリスクの概念をリスクアセスメントに導入することを目的にしている。

      この概念を基盤とした社会総合リスクアセスメントでは、先端科学技術の導入における影響を単純に測定できない事象に対し、環境や経済、社会制度の総合的な影響評価に留まらず、生活、人心、社会活動などへの影響も考慮する、新しいコンセプトを提唱している。

      水素エネルギーの技術導入の影響を調べるため、実際に燃料電池自動車を通した利用者の受容性調査にも取り組んでいる
      水素エネルギーの技術導入の影響を調べるため、実際に燃料電池自動車を通した利用者の受容性調査にも取り組んでいる

      科学技術とのリスク共生とは、人や社会がどのようなリスクを選択して技術を受け入れられるかということだと稗貫さんは言う。科学技術が生活や社会に与える影響を評価するということに対して、分析手法にこだわらず適切な手法を取ろうという自分の意思を博士論文を通して明瞭にした稗貫さんにとって、挑戦しがいのある分野だ。

      理工学や社会科学など、それまでとは違う異分野の研究者と連携しながら、稗貫さんは、科学技術の影響を総合的に評価する部分に独自の視点を示している。1人の研究者として新しい道を切り拓くための経験と能力を、稗貫さんは博士論文の執筆を目前にしたときの研究に対する自覚とチャレンジから得たのである。 (文・神藤 拓実)

      (2)三井化学株式会社 次世代事業開発室 コーポレートベンチャリンググループ サブグループリーダー 林田英樹さん「体系化する知識に、自身の経験、情熱が与える独自性」

      三井化学株式会社 次世代事業開発室 コーポレートベンチャリンググループ サブグループリーダー 林田英樹さん
      三井化学株式会社 次世代事業開発室 コーポレートベンチャリンググループ サブグループリーダー 林田英樹さん/博士(理学)、経営学修士(MBA)。三井化学株式会社 次世代事業開発室 コーポレートベンチャリンググループ サブグループリーダー(現任)。昭和電工株式会社化学品事業部では、営業部長代理としてグローバル半導体ガス事業の拡大に貢献。青色LED向けの高純度アンモニアガス事業において世界No.1の事業規模を確保。DSM Engineering Plastics グローバルポリアミド4T フィルム事業部長、BASF JapanIndustry Team E&E 日本統括部長の経験を持つ。博士論文のタイトルは「修正イジングモデルに基づいた研究開発プロセスの定量的解析に関する理論的研究」。

      現在、三井化学株式会社の次世代事業開発室コーポレートベンチャリンググループサブグループリーダーとして活躍する林田英樹さん。一般企業に務めながら、忙しい時間の合間を縫って今も論文を書く、生粋の研究者である。そんな研究者としての生き方は、事業開発の現場で経験を積む中で博士号取得を目指したことがきっかけだった。時間と戦いながらも生み出した博士論文は、自身のかけがえのない経験の結晶だった。

      開発した技術を世に出すために

      林田さんのキャリアの原点は工場にある。昭和電工に入社当初、技術者として工場に配属された。 「どれだけ良い製品を開発しても、お客様の手元に届けるには、製造ラインも開発する必要があります。開発した技術を世に出す最初のステップを知れたことはとても良い経験になりました」と当時を振り返る。

      1997年、青色LEDが開発された当時、林田さんはその製造工程において使用される高純度アン モニアガスのビジネスに携わっていた。最先端の技術を誰よりも早く世に出したいと、社内のあらゆる部署に掛け合いながら、研究開発チームを立ち上げ、研究開発と生産量を増やすための製造設備の拡充、保存容器の開発、販路の確保などの新事業化に奔走した。青色LEDは蛍光灯の4倍も寿命が長く、消費電力も従来の電球の10分の1。環境への負荷が軽減される。

      「実現には多大な投資も必要でした。社内の意思決定者たちに思うように理解してもらえず、時には声を荒げたこともあったと記憶しています。でも、自分のビジョンは間違いではないと信じていました」

      経験を重ねる中で技術を世に出すためには、専門知識だけではなく、ビジネスを学ぶことも必要だと考えてMBAを取得した。博士号を取った理由もまた同様、技術を世に出すための折衝の場で外資企業のプロフェッショナルと対等な立場に立つために博士号の必要性を感じたからだった。

      経験を組み込んだ新たな知の形を作る

      自分の時間とお金を投資し、フルタイムで勤務しながらの博士号取得を決心した林田さん。確実 に博士号を取ろうと思い、事前に何人もの指導教員と面談するなど入念な情報収集を欠かさなかった。その結果、実験を何回も繰り返す時間を取ることは難しいので、理論研究を博士論文のテーマに据えることに決め、挑戦をスタートした。

      林田さんの研究テーマは、企業において積み上げた研究開発の実体験に基づいた、研究開発から事業化のプロセスを説明するモデルの開発だった。上手くいくケースと失敗するケースの違いは何か。さまざまな要因が絡んでいるであろう研究開発のプロセスとその進行状況を予測することで、問題を可視化することを目指した。

      「博論の評価に、研究に対する思いの深さは関係ありません。そこで示す研究がオリジナルであるか、既存の知識にはない新規性があるか、論理的に構築されているか、の3つの条件が必要です」

      とはいえ、テーマは林田さん自身が現場で翻弄された経験があるからこそ生まれた研究プロジェクト。思い入れは自然と深まった。

      「博論では自分の経験値、知識、好きをまとめました。博論を書くには自分の仮説を深掘りするため、分野にかかわらず、自分の周りにいるいろんな研究者と議論することが大切です。場合によってはビジネスの経験も必要かもしれません」

      6年の歳月をかけて新しい知として形作ったそのモデルは、まさに彼の渾身の力を注いだ賜物だ。

      技術創造の現場で理論の実証を繰り返す

      現在林田さんは、社内で複数の研究プロジェクトのマネジメントをしながら研究開発に携わり、 同時に自社と連携可能性があるベンチャー企業の発掘、投資にもかかわっている。

      「アカデミアでも民間企業でも、研究者として目指すことは変わらず、社会をより良くする技術を世に出すことだと思います。今は自分の手を動かしていませんが、実験をするだけが研究ではありません。でも、論文は趣味で書いています」と無邪気に答える。

      研究開発型ベンチャーの発掘・育成プログラムで審査員を務める林田さん。撮影: 漆原未代
      研究開発型ベンチャーの発掘・育成プログラムで審査員を務める林田さん。撮影: 漆原未代

      林田さんが目指しているのは、作り上げたモデルの精度を上げ、実際に企業が活用して世の中に 新しい技術が生まれるスピードを加速すること。そのゴールに向かって、モデルにさまざまな事例を当てはめ実証するなど、再現性の証明を推し進めている。

      自身が積み重ねてきた数々の豊富な経験、苦悩、そして情熱のすべてを詰め込み体系的に表現した博士論文。それは彼のライフワークでもある。自分が築き上げた知が紐解く領域を、一歩、また一歩、押し広げ続ける研究者の姿がそこにあった。 (文・森本 けいこ)

      (3)名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所 特任准教授 佐藤綾人さん「多様な視点から研究を俯瞰するバランス感」

      名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所 特任准教授 佐藤綾人さん
      名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所 特任准教授 佐藤綾人さん/2005年名古屋大学大学院理学研究科物質理学専攻博士課程修了。博士(理学)。京都大学、理化学研究所を経て2013年より現所属。2016年より現職。世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI:World Premier International Research CenterInitiative)の採択拠点である研究所で、化合物ライブラリーセンターのチーフコーディネーターと、リサーチプロモーションディビジョンのヘッドを務める。博士論文のタイトルは「キシロースの縮合したエリナシン類の合成研究」。

      ヤマブシタケが含有する天然化合物のエリナシン類の合成研究で博士号を取得した佐藤綾人さん。博士論文は、一人前の研究者として成長していくプロセスの中での重要な通過点の一つだと佐藤さんは語る。博士課程時代を振り返ったときに最も重要だったのは、個性豊かな他領域の研究者と関わりながら研究を進めていったことだという。

      魅せられた天然物化学の世界

      佐藤さんは、博士進学を考えている中で、天然物化学の大家である上村大輔教授の講演を聞いた。「自然界には、人の知見を凌駕するような特異な化学構造の有機化合物が存在する。それらが、陸空海に生息する生物の生命現象に対して切れ味鋭く作用する」という話に惹かれ、上村教授の研究室の門を叩いた。

      自身が修士課程までに取り組んできた有機化学の視点から、地球全体の壮大な生命現象までを広い視野に入れて議論することができる天然物化学の世界に魅せられたのだ。

      生理活性を持つ天然化合物は人の薬にもなり得る。佐藤さんは、天然のヤマブシタケに含有され、かつ抗認知症の効果や新たな鎮痛剤として期待されているエリナシン類に着目し、自分が培ってきた有機合成の経験を活かして、その全合成に取り組んだ。

      自由闊達な研究室で一人前の研究者へ

      上村研究室では、サンゴ、微細藻類といった海洋生物など、自然界のさまざまな現象を制御する 天然化合物に対して、多様なバックグランドの個性ある研究者たちが切磋琢磨していた。

      最も驚いたのは、研究の進め方についての裁量が学生本人にあったことだ。十分な思考のもとに作り出されたロジック、研究計画があれば、自分のやりたいことを何でもできる自由闊達な風土がそこにあった。

      天然物の全合成の過程では、当然のように仮説の検証や実験が思う通りにいかないという壁にぶち当たることが何度もあった。その度、年齢や学年の上下にかかわらず研究室の仲間たちと積極的に議論し、それを直接的・間接的に活かして次なる仮説・検証・考察に活かすことで、壁を越えていったという。

      「自分で考えて実験をして、だめだったら戻って、周りの意見も取り入れながら考えて、実験することを繰り返しました。最終的に、博論の段階では全合成を達成できなかったのですが、研究の過程において、天然物化学、ケミカルエコロジーといった異なる領域の人の意見も取り入れながら研究を進められたことが、自分が1人前の研究者としての生き方を自然と身につけることにつながっていたと思います」と、佐藤さんは語る。

      異分野の化学反応で博士が育つ場

      博士号を取得後、研究のプロとしてアカデミアで研究領域を渡り歩きながら、佐藤さんは計4 つの研究室の立ち上げを経験した。現在は、トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM:Institute of Transformative Bio-Molecules)で、化合物ライブラリーセンターのチーフコーディネータとしてケミカルバイオロジー研究を推進している。

      ITbMは、合成化学、触媒化学、システム生命科学、動植物生物学、理論科学を融合し、生命システムを「発見・可視化・制御」するための分子をデザインおよび創出する世界的な分子研究拠点だ。研究推進グループ(リサーチプロモーションディビジョン)を立ち上げて挑戦しているのは、異なる分野の研究者が1つ屋根の下で融合研究を推進できる環境(ミックスラボ)づくりだ。

      そこでは、研究者とともに、アイデアの具現化、研究費申請、論文化に向けた研究内容の相談、研究成果のプレスリリース、知財・技術移転、社会受容形成(アウトリーチ)など、一連の活動を展開している。

      ITbM の活動の一環でプロモーション活動をする佐藤さん。
      ITbM の活動の一環でプロモーション活動をする佐藤さん。

      世界トップレベルの研究成果を生む環境の整備には、佐藤さんが博士課程時代に経験した、それぞれの研究者の研究領域を自由闊達に語り協働する上村研究室の研究風土も活かされているという。

      1人の博士が、自分の博士論文を書くということだけに縛られず、自分の研究を取り巻く人たちと多面的な議論を繰り広げ、思考、経験の幅を広くしていくことこそが、その後の研究キャリアをより豊かにしていくのではないだろうか。 (文・神藤 拓実)

      俯瞰できるようになると、研究者としての自分らしさが明確になる

      博士論文は、それまでの自身の研究の集大成ともいえるでしょう。数年間の研究成果やプロセスを1つのストーリーにまとめるのは簡単なことではありません。ストーリーを構築しては見直し、また作り直して、と何度も行き来することもあります。1人で研究に向き合う時間はもちろん大切です。

      しかし、俯瞰的視座を手に入れることは、それだけで達成されるものでもありません。
      例えば、
      ・研究の中で出会った人のことを思い出す
      ・たくさんの研究者に対して、自身の経験と想いを語る
      ・異分野の中でたくさんの研究者とディスカッションを繰り返す
      など、さまざまな人々との交流を通じて自分自身の立ち位置を浮き彫りにしていくことも重要な要素となりそうです。

      博士論文に向き合った経験とそこで得た気づきは、研究の独創性となるだけではなく、その人 独自の研究者としての生き方の核になっているようでした。

      「博士論文を書く」

      その中で自分自身の問いと、それに対する向き合い方を日々突き詰めていくことが、研究者としてのあなたらしさの確立につながっていくはずです。

      この記事をブックマーク

      登場人物をフォロー


      著者


      関連記事

      リバネスIDにユーザー登録する(無料)

      ブックマーク、フォロー、新着コンテンツのお知らせなどをご利用いただけます

      リバネスIDは研究者の知識製造を加速させるためのプラットフォームです( →リバネスIDとは