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      リアルテックファンドは、テクノロジーで世界を豊かにする「エコシステム」を作る(第8回超異分野学会「リアルテックベンチャー・オブ・ザ・イヤー2019」授賞式スピーチダイジェスト)

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      地球や人類の課題解決に資する研究開発型の革新的テクノロジーへの投資を行っているリアルテックファンド。しかし同ファンド代表の永田暁彦氏は「投資がしたくてやっているわけではない」と断言する。果たしてその真意とは……。ここでは、第8回本大会で開催されたリアルテックベンチャー・オブ・ザ・イヤー2019における永田氏のスピーチを抜粋してお届けします。 →超異分野学会ウェブサイト

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      スピーカー

      永田暁彦 氏

      リアルテックファンド 代表/ユーグレナ取締役代表執行役員CEO
      独立系プライベートエクイティファンド出身。2008年に株式会社ユーグレナの取締役に就任。ユーグレナ社においては、事業戦略立案、M&A、資金調達、資本提携、広報・IR、管理部門など事業全般を統括。技術を支える戦略、ファイナンス分野に精通。リアルテックファンドでは、代表としてファンド運営全般を統括する。

      「作業着と白衣の革命」を後押ししたい。

      リアルテックファンド代表の永田です。「リアルテックファンドとは何なのか」「何を目指しているのか」ということを本日は皆さんにお伝えしたいと思っています。

      リアルテックファンドは、2015年にユーグレナ、リバネスそしてSMBC日興証券が3社で起ち上げたファンドです。ファンドですから、当然ながらお金を集めて投資するという機能を持っているわけですが、私たちは本質的にファンドをやりたくてやっているわけではありません。もっとわかりやすくいえば、お金が好きで、お金を増やしたいと思ってファンドをやっているわけではありません。

      リアルテックで世界を良くしたい、テクノロジーで世界を良くしたい、何ならテクノロジーではなくてもいいからとにかく世界を良くしたい。私たちは、そういう純粋な想いが潰されないための仕組み作りをしたくて、このファンドを運営しています。

      「リアルテック」という言葉は、私たちがつくった造語です。「人類と地球をより良くするための研究開発型のテクノロジー」が私たちにとってのリアルテックであり、逆にいえば、人の役にも地球の役にも立たない技術はリアルだと思っていません。

      近年ではディープテックという言葉がトレンドになっていますが、研究者を支援してきた私たちからすると、「最近どうもトレンドが来ているらしい」などと簡単に言われることには違和感があります。

      なぜならずっと前から、何年も何十年も研究に取り組んでいる人たちがいて、毎年新しい研究成果が発表されているからです。素晴らしい研究者は最近になって急に生まれたわけではありません。ずっと生まれ続けているんです。

      でも一方で、「どうして東工大はMITみたいに格好よく思われないんだろう」と疑問に思う気持ちもあります。だからこそ、ここに人もお金もモノも集まるようにすることで、リアルテックの領域が世界を変えていくことを目指したい。研究者による「作業着と白衣の革命」を後押ししたい。それこそがリアルテックファンドの役割だと考えています。

      ユーグレナの成功体験を、次のリアルテックベンチャーに。

      私はユーグレナというバイオベンチャーの副社長もやっています(2019年時点。2021年10月現在は取締役代表執行役CEO)。ユーグレナは2005年に東大発ベンチャーとして創業し、世界で初めてユーグレナ(和名:ミドリムシ)という微細藻類の屋外大量培養に成功した会社です。このユーグレナを食品や化粧品、あるいはバイオ燃料に使うという研究を続け、2019年現在で年間売上約150億円、時価総額1000億円(2019年3月時点)というところまで来ました。

      また2012年にIPOをして、2014年には東大発ベンチャーとして史上初となる東証一部に上場しました。私自身も当時は34歳で、一部上場企業の最年少CFOでした。

      でも創業当初の私たちは、本当に貧しい、「みにくいアヒルの子」だったんです。創業からの数年はライブドアショックやリーマンショックがあった時期で、一番ひどいときには社員数15人でキャッシュが20万円ということもありました。「日繰り」どころか「時繰り」の資金繰りで、「今日は何時に誰々にお金を返さなければ」ということをしていました。そんな状況だったので、誰からも見向きもしてもらえません。本当に踏んだり蹴ったりの日常でした。

      でもそんな中でも、最初の最初から味方でいてくれたのがリバネスです。ユーグレナのことをみんながバカにする中で、共同研究をする先生や、共同開発をする事業会社を見つけてくれたりと、一番つらかった時代を並走してくれました。そして結果的にユーグレナ社とリバネスの組み合わせは、リアルテックベンチャーとその支援をする会社の組み合わせとして、一つの成功モデルになりました。

      こうした成功モデルは、特に研究開発型ベンチャーの領域ではほとんどありません。だからこそ、「自分たちが得たものや成功体験を、世界を変えようとする次のリアルテックベンチャーに全部あげよう」というのが、リアルテックファンドの共同代表でもあるリバネスの丸さんとの共通認識になっています。

      「お金だけ」ではなく、「知恵と人とお金」を出してくださるパートナー。

      しかし、リアルテックファンドは、ユーグレナ社とリバネスだけで成り立つわけではありません。この活動が実現しているのは、「お金だけ」ではなく、「知恵と人とお金」を出してくださる事業会社とのパートナーシップがあるからこそです。

      この背景には、リアルテックベンチャーの特性があります。例えば、あるベンチャーが優れた基礎技術を持っていたとしても、ITやウェブの世界とは違って、技術単体では世界を変えることができません。マニュファクチャリングをして、他の誰かに使ってもらわなければいけないからです。つまり、リアルテックベンチャーが成功するためには、さまざまな技術の掛け算が必要になります。

      ユーグレナも、創業してから上場するまでには、いろいろなパートナーシップをリバネスと共に結んできました。まさにベンチャーと同じ目線に立って、「共に世界を変えよう」という熱のある事業会社との連携が鍵になったわけです。

      そうした経験をふまえると、リアルテックベンチャーを支援するファンドとしても、「技術の社会実装を通して世界を変えていく」というモチベーションを持つ事業会社との連携は不可欠だと考えました。そして非常にありがたいことに、ファンド設立からの5年間で合計30社の素晴らしい企業とのパートナーシップを結ぶことができました。

      パートナー企業のトップや現場の方々が、強い好奇心をもって私たちと関わってくれることで、現在はリアルテックベンチャーとの連携がシームレスに加速しています。

      次のGoogleは生まれなくても、次のトヨタはきっと生まれる。

      リアルテックファンドは、経済産業省とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の両方から認定を受けています。同様のファンドは、日本で2社しかありません。つまり「日本の基礎技術を世界に持っていく」という取り組みに対して、国を挙げて支援をしてもらっています。

      皆さんに聞きたいのですが、日本から本当に次のGoogleやAmazonは生まれるでしょうか。正直、私にはちょっとイメージできません。でも、次のトヨタやファナック、次のコマツや帝人はきっと生まれると私は信じています。皆さんもそのほうがイメージが湧くのではないでしょうか。私は、日本の技術で、日本らしい戦い方をしていきたいんです。

      そのためにリバネスと共に作ってきているエコシステムには、例えばこの超異分野学会のような仲間集めの場や、リバネス研究費のような若手研究者の研究助成をする取り組みがあります。その他にも、テックプランターという研究開発型ベンチャーに対するアクセラレーションプログラムなどがあり、リアルテックベンチャーが事業化する前の段階から支援をする構造ができています。

      こうした一つ一つの取り組みの結果として、会社としてぴょこっと芽が出たら、そこから先がリアルテックファンドの出番です。小さな芽のような会社に、水や肥料としてお金と人と知恵を提供しながら育てていきます。会社やビジネスや技術が進化していくためには、さまざまな要素が必要です。それらをブリッジさせていくのが、リアルテックファンドの機能であり、役割だと考えています。

      リアルテックベンチャーにはIPとHRとPRが必要。

      2019年現在において、お金は既にコモディティです。もし皆さんの周りに「お金が集まらない」と嘆いているベンチャーがいるとしたら、残念ながらそれは相当イケてない証拠です。でもベンチャーにとって本当に必要なのは、経験やリレーションシップや共同研究や社会実装のためのエッセンスです。

      リアルテックファンドは、スタートアップに投資した後に、当然ファイナンス面の支援を実施します。事業開発・事業連携の支援もやります。それだけではなく、専任の弁理士と共にIP戦略を徹底的にやり、人材やチームビルティングの専門家がHRも徹底的にやります。現在40社ある支援先に対して、日本だけでなく世界中から、素晴らしい人材をどんどん送り込んでいます。

      そして、もう一つ重要なのがクリエイティブとPRです。一般的な話として、多くの研究者は「自分がやっていることの価値がわからないのは、社会が悪いから」と思っています。でもこれ、本当は逆だと思っています。研究者の側が、社会にわかってもらえるように見せないといけない。

      だからこそリアルテックファンドでは、投資して一番最初に実施するのがクリエイティブ支援です。見える化、わかる化をきちんと仕上げる。それをプロモーションすることで世の中がびっくりして、「応援したい」というところまで持っていきます。

      こういう「系」を作ることによって、初めてリアルテックベンチャーは前に進むことができるようになります。彼らは若い会社で、技術があって、そして何よりも世界を変えたいという情熱があります。でも、どうやって先に進めばいいかは全く見当もつかない状況です。そこに、お金だけポンと出しても意味がないんです。

      周りの雑草を抜いてあげて、土地を耕してあげて、きちんと日が当たるようにしてあげないといけない。一緒に走らないといけない。リアルテックファンドがやっているのは、そういうことです。

      「テクノロジーは無理」と笑う人たちを、あと5年で黙らせる。

      2005年に「ミドリムシで世界を救うんだ」とユーグレナ社を始めたときには、日本中から笑われました。でも、上場したらみんな見事に手のひらを返しました。2015年に丸さんと一緒に「リアルテックで日本をなんとかしよう」と決めたときにも、私たちは笑われました。「テクノロジーの投資は無理だよ」「俺たちもう何回もやってるから知ってるんだよ」と。

      確かに、一世代前にはバイオベンチャーブームがあって、主に創薬分野のベンチャーにたくさんお金がつきました。ただ、そこから上場して本当に黒字になった会社は10%もありません。だから「テクノロジーは無理」「時間がかかる」となるわけです。

      でも、私たちは「それは逆だろ」と思っています。時間がかかるからこそ、まだ若い私たちが50年でも100年でも時間をかけてやっていくべきなんです。

      今やリアルテックは、ディープテックのトレンドも含めて、日本中で渦を巻き始めています。メディアへの露出が明らかに増えて、リアルテックベンチャーへの人の移動も起きています。お金もどんどん集まってきています。「やっぱりこっちなんじゃないか」と思い始めた人が大勢いるということです。

      繰り返し言っているように、私たちはリターンだけを目指してるファンドではありません。ただ、社会を変えていくためには、「テクノロジーでは無理」と笑う人たちにも理解してもらう必要があります。だからリアルテックファンドでは、2022年までに少なくとも12社をIPOさせたいと思っています。誰もが「それは儲からないよ」と思っている領域で私たちが成果を出せば、黙って真似をする人たちが出てくると期待しているからです。

      そうやって真似をする人たちが100人現れたときには、私と丸さんはファンドをやめます。ファンド設立から5年が経った今は、リアルテックの渦の一番重い部分を一生懸命押しているところです。あと5年もすれば、この渦がグルグルと回り出していると確信しています。

      リアルテックファンドは、グローバルで活動していく。

      私たちはアントレプレナーです。常に進化し続けなければいけません。ですから、今年リアルテックファンドは投資支援先をグローバルにも拡大します。特に面白いと思っているのは、アジア圏です。アジアには、大いなる熱を持って、未来を信じているリアルテック領域の新しい研究者やアントレプレナーがたくさんいます。その人たちにも、私たちの経験をシェアしていきたいと思っています。

      実は、アジア圏のリアルテックベンチャーには、ある一つの共通した悩みがあります。それは、自分たちの国にリアルテックでスターになった大企業がほとんどいないということです。その一方で、日本にはゼロから技術開発をスタートして、それを社会実装して、巨大なインパクトを与えてきた大企業が溢れています。日本人自身が一番気づいていないことですが、アジアの若者、アジアの若手研究者、そしてアジアの若いベンチャーは、ここのコネクションを強く求めているんです。

      逆に日本のアカデミアには溢れるほどの技術がありますが、それを社会実装するアントレプレナーがあまりにも少ない。だから私たちは、そういった人材を海外から連れてこようとも思っています。

      つまり、これからのリアルテックファンドの活動では、グローバルな規模で技術と情熱と大企業をつなげていくことで、私たちが目指している「世界を変える」「人類を変える」「地球をより豊かにする」ことを実現したいと考えています。

      一つ一つのアクションの積み重ねで、世界は変わる。

      最後に、私からのお願いを3つだけ言わせてください。

      一つめ。私たちはユーグレナ社で、本当に死ぬほど苦労をしてきました。今は、そんな自分たちが上場して得た経験を、リバネスと一緒になって、次の世代に還元したいと純粋に思っています。だからこそ、これから成長して上場していくスタートアップにも、ぜひ同じように次世代への還元を一つの義務だと思ってやってほしいと期待しています。

      二つめ。日本にはたくさんの大企業がありますが、そのほとんどは既に創業者が亡くなっています。つまり、かつては日本にもたくさんいたリアルテック領域でのアントレプレナーが、今はいなくなりつつあり、次世代に継承できる人が減っていると思っています。

      リアルテックファンドでは出資いただいている大企業からの出向を受け入れ、「自分もアントレプレナーとして仕事をしてみたい」と思う方に新しい挑戦ができる環境を作っています。実際に大企業からの出向で大活躍している超イケてるおじさんもいますし、チャレンジしてみたい方はぜひ手を挙げてください。

      そして三つめ。私たちは、ファンドを一つの機能としてしか捉えていません。私たちがやりたいのは、情熱や好奇心から生まれたテクノロジーを社会実装するエコシステム作りです。もしこの活動に少しでも共感していただけるのであれば、それを一つのアクションにつなげてほしいと思います。

      リアルテックファンドのことを誰かに伝えるだけでもいい、誰かを支援することでもいい、もちろん投資してみることでもいい。あるいは、リバネス社員の肩を揉んであげるだけでもいい。本当にどんな形でも構いません。その一つ一つのアクションが積み重なることで、世界は変わっていくと私は信じていますので、どうぞよろしくお願いします。

      これでスピーチを終わりたいと思います。ありがとうございました。

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