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      超組織的に新しいコトを起こすリーダー人材とは 〜研究所・新規事業創出部門のリーダー取材から見えてきたこと〜

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      研究所や新規事業創出部門で挑戦を続ける組織のリーダーはどのようなビジョンを持ち、組織の風土醸成・人材育成を推進しているのでしょうか。これまで「人材応援」vol.01-vol.10にて連載してきた『人間青山』のコーナーを通じてインタビューした10 名のお話をもとに、リーダー人材像とその育成方法を整理しました。※本記事は2020年3月発行「人材応援」vol.12に掲載されたものです

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      はじめに

      より大きな社会課題解決に挑むためには組織や分野を超えたチームビルディングが必要です。「価値観や文化の異なる異組織の人材がチームになるためには、人材育成においてもそれぞれの組織に閉じない育成の仕組みづくりが必要なのではないか」という問いのもと、生まれたのが、本誌の掲げる人材応援プロジェクトです。

      世界中が既存事業に囚われない新規研究・新規事業を追い求める時代に突入した現在、各社の方向性は「利潤の追求」だけではなく、「社会課題解決とビジネスの両立」にシフトしています。新規事業創出における組織の課題解決が人材応援プロジェクトの推進にもつながると考え、本誌では「人材」の視点からの課題解決を目指して様々な取材を行ってきました。

      研究所や新規事業創出部門で挑戦を続ける組織のリーダーはどのようなビジョンを持ち、組織の風土醸成・人材育成を推進しているのでしょうか。本原稿は、これまで本誌vol.01-vol.10にて連載してきた『人間青山』のコーナーを通じてインタビューした、10 名のお話をもとに作成しました。

      これまで取材した10 名は、いずれも自社の未来の価値創造につながる、「飛び地的な」新規事業を創出することを見据え、「今まさに」社内の仕組みづくりに取り組んでいる方々です。取材を通じて、以下の3 点について、生々しい現場の情報を得ることができました。

      (1)取り組みを開始して見えてきた自社の課題
      (2)その課題を解決するために必要な人材像
      (3)試行錯誤を通じて見えてきた人材育成方法の仮説

      それぞれの組織の状況や新規事業創出に関する目標は様々でしたが、新規事業創出の動きを阻む「壁」や社員に不足している考え方やスキルには共通のキーワードが頻出していました。そこから、リーダー人材像とその育成方法を整理しました。

      新しいことを起こす事を目指す組織において、求められる人材とはどのようなリーダーシップを持つ人なのでしょうか。

      10 社の取材から見えてきた『課題』と必要な人材

      新規事業創出において「テーマ創出ができる人材の不足」はまず挙げられる課題でありました。しかし、創出されたテーマが新事業の種になるまでの間には「社内外のブリッジ」や「風土改革」「マネージャーの存在」など実に様々な課題があることが明らかになってきました。

      <現場の声>
      ・顧客や事業部から降りてくる課題解決に満足してしまい、外に開拓に行けていない。 ・コトを起こせる人材はどこにいて、どんな人なのか?社内から発掘する基準・方法がない。 ・既存事業から一線を置いた判断軸や目標設定がないと、大企業の『病』に飲み込まれてしまう。 ・「とは言え既存事業が・・」となってしまい、相反するものを内包させる事ができていない。 ・社内の意識、価値観を変化させ、イノベーションの機運をどう高めればいいのか? ・事業部やベンチャーの目的・目標を理解して合意形成するストーリーを構築力を持った人がいない。

      取材をした企業の内、8/10 社が既存の事業部や研究所から独立した「新規事業創出部門」または「新テーマ創出プロジェクト」を設置していました。組織のメイン事業からある程度独立した「出島」ととらえると、これらの課題は出島の中と本体や外部との接続の課題に分けられました。整理した課題をFig1 にまとめます。

      新規テーマ・事業創出における課題と必要な役割

      テーマ創造に限らず、提案されたアイデアを目利きして前に進めるマネージャーの存在や、育ってきたアイデアを本体と接続して世に出すブリッジ人材の存在、新しい取り組みにコミットしやすい風土作りを考える人材、そして、それを持続的に回していくための「新人」の発掘といった役割を担う人材が、新規事業の種を育てるキーとなることが分かってきました。

      新しいコトを起こす組織に必要なリーダー人材に求められる要素とは

      上記で挙げられた課題解決のための役割は、必ずしも1 人1 人独立した役割としてリーダーシップを発揮するというわけではなく、それぞれの得意不得意はあれど、出島で活躍する人材は複合的にリーダーシップ担う必要性が伺われました。

      では、役割に寄らず、そのような組織でリーダーとして活躍する人材に必要な要素とはどのようなものなのでしょうか。今回取材した方々が実践の中で得た失敗・成功経験から、特に変化が求められる7 つの要素を抽出しました。

      リーダー人材に求められる変化

      まず、リーダー1 人1 人が持つ思考の変化として求められているのは、(1)何をするかを考えるだけでなく、そもその何のためにするのかという課題発掘の力です。これまでは「売り上げのために」「お客様のために」が当たり前でしたが、その常識を覆していく事が求められています。

      また、本流の最先端/ トップではなく、外の世界からの自由な課題発掘が求められる中、(2)他者に負けない強みではなく、違いを見出して開拓していく視点や、(3)変化を促そうとするのではなく、自らが変化するという姿勢、(4)自力で完璧なものを目指すのではなく、他のアイデアを融合させながら自分の当初の想像を超えたものを生み出す柔軟さについても語られました。

      そういった人材によって構成するチームには、(5)強烈なリーダーや参謀・支援者ではなく、全員が主体者として推進する風土や、(6)「売り上げ目標の達成や右肩上がりに成長する数字」とは異なる価値観が必要です。常に変化を続けるチームにおいては、(7)ルールを整備し、変化のたびに修正していては間に合いません。考え方を共有し、現場での判断を可能にする仕組みが期待されていました。

      人材を育てる4つの土壌の提言

      上記のような人材をどのようにして育てるのか。10 社のリーダーから伺った「仮説」をもとに、その仕掛けとなる土壌づくりについて以下の通り提言します。

      提言1 異世界へのチャネルをつくる

      外の世界に触れる行動を習慣化できる環境を組織の中に持ち、異分野とぶつかることで、自分の隠れた伸びしろを見つける。ベンチャー企業の若いマインドに触れることで自身の思考に新しい風を入れる。他と自分を融合して新しいアイデアを考える、といった思考が加速するのではないでしょうか。

      提言2 社員が自分と自社を語る機会を増やす

      最終的には「自社との一致性」がなければ新規事業の創出は実現しません。企業のトップだけでなく、若手・中堅のリーダー人材も組織が何のために存在するのか、何を目指しているのかを自分事と重ねて内外に発信する経験を積むことが、自社内での浸透と、他組織との連携を可能にする力を育てるのではないでしょうか。

      提言3 これまでとは違う視点で社員を知る場をつくる

      どんな人材が新しいことを起こすことができるのか。これまでの評価系で優秀だった方がそれに向いているとは限りません。志向の異なる講演会や勉強会といった仕掛けや、社員による自由な提案の機会といった場を仕掛けることで、個の感性や興味、志向など、様々な視点から社員に訴えかけ、思いがけない人材の発掘が可能になるのではないでしょうか。

      提言4 主体者になり、小さな成功体験を積む機会をつくる

      いきなり大きなことを成し遂げられるリーダーは育成できません。最初の一歩に対する社内のハードルを下げ、まずは提案者がリーダーシップを取って「小さくやってみる」ことを可能にする枠組みをつくることが、主体的リーダーを育む土壌になるのではないでしょうか。

      人材応援プロジェクトでは、本取材を通じて、抽出された課題や仮説をもとに、チームビルディングや人材の発掘、「出島」の構築、リーダー人材の育成を各社と開始しています。企業における新規事業創出を通じて、様々な社会課題の解決に、今後も挑んでまいります。

      インタビューにご協力いただきました下記の皆様に心より感謝申し上げます。 ※企業名、所属、肩書等は取材当時のものを掲載させていただいております。

      ・株式会社IHI 理事 技術開発本部 副本部長(兼)基盤技術研究所 所長 張惟敦氏
      ・凸版印刷株式会社 情報コミュニケーション事業本部 ビジネスイノベーション推進本部 本部長 糸谷祥輝 氏
      ・三井化学株式会社 常務執行役員 研究開発本部長 工学博士 福田伸 氏
      ・株式会社ジェイテクト 研究開発本部研究企画部 部長 桑原寛文 氏
      ・川崎重工業株式会社 理事 マーケティング本部イノベーション部長 野田真 氏
      ・三菱電機株式会社 未来イノベーションセンター エクスプローリンググループマネージャー 山中聡 氏
      ・ロート製薬株式会社 広報・CSV 推進部 部長 河崎保徳 氏
      ・日本ユニシス株式会社 グループマーケティング部 戦略企画室 インキュベーションマネージャ 田中美穂 氏
      ・アサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社 研究開発戦略部 部長 新規事業開発ラボ 副所長 進藤洋一郎 氏
      ・株式会社オプティム 経営企画本部 本部長 山下隆敏 氏

      <本記事に関する問い合わせ>
      株式会社リバネス 人材開発事業部
      TEL: 03-5227-4198
      Email: hd@Lnest.jp (担当 環野・楠)

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