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      教育

      学外の仲間たちと共に未来の学園を探究する~教育研究所構想~

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      社会のあり方が多様化する現代において、時代を生き抜くための知識や考え方についての教育を、学校の先生だけが担うことには限界があります。私たちは、教育現場に企業や大学、研究機関の知識を取り込むことが、社会との繋がりを理解し、常に新しい時代を生き抜く学びを得る場であり続けるための条件になると考えています。リバネス教育総合研究センターでは、企業、大学、研究機関と共に教育プログラムの開発や教育課題の検証を進めています。また、全国の教育関係者からフィードバックや評価を受ける機会を設け、社会と学校の連携教育における最適解を検証していきます。 ※本記事は2020年3月発行「教育応援」vol.45に掲載されたものです

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      中高生の研究活動をあたりまえに

      2001年、理科離れやポスドク問題といった社会問題が叫ばれる中、リバネスは若手研究者・技術者が自身の研究の魅力を次世代へ伝える出前実験教室を、国内で初めてビジネスとして開始しました。大学で今行われている研究を伝えていくことが、教科書では伝えられない最先端科学の魅力を伝え、未来の仲間を増やす生きた教材になると考えたのです。

      リバネスによる出前実験教室の様子

      さらに、産業界と教育界が連携し新たな科学教育活動を創出する「教育応援プロジェクト」を立ち上げ、この想いに共感する企業と共に科学技術の魅力を伝えています。

      企業による実験工作教室の様子(川崎重工業株式会社)

      こうした取り組みの中で、研究活動を行いたいという意欲を持つ中高生たちが、私たちの周りに集まってきました。2012年からは、彼らが自身の研究内容を発表する場を創ろうと、中高生のための学会「サイエンスキャッスル」を開催し、2019年には国内4箇所、さらにシンガポール、マレーシアの海外大会を開催するまでに発展しています。全大会をあわせると、年間1500名以上の中高生研究者たちが集結し、400を超える研究テーマが発表されています。

      研究アドバイザーとのポスター発表に関するディスカッションの様子

      そして、この場所には、100人以上の博士・修士の大学の研究者たちがアドバイザーとして参加しています。中高生と専門家たちが直に議論することで、研究に対するフィードバックを得て、場合によっては共同研究にもつながる場となっています。

      大学院生・研究者との研究キャリアに関するディスカッションの様子

      生徒と研究者の化学反応が飛躍を生む

      中高生たちが研究を進める上で、研究資金や専門的知見の不足が課題となっているとの声をよく耳にするようになりました。そこで2016年からは、中高生のための研究助成事業「サイエンスキャッスル研究費」を始動。これまでに10団体の企業や財団と連携し、28回の研究費を設置し、390テーマを支援してきました。採択チームに対しては、リバネスの社員に加えて、企業や大学の研究者たちが定期的にアドバイスを行いながら研究をサポートしています。

      研究アドバイザーとの定期面談の様子

      研究テーマの設定の段階からアドバイザーと議論を重ね研究をスタートさせ、サイエンスキャッスルシンガポール大会で発表、受賞するまでに飛躍した事例も生まれています。これらの活動を通じて見えてきたことは、生徒の活躍の裏側には、少なからず研究者たちの後押しがあったということです。熱を持った大学や企業の研究者と生徒たちが繋がり合うことで、化学反応が生まれ、研究の推進や新しいアイデアを生み出すきっかけとなっているのです。

      サイエンスキャッスルシンガポール大会 最優秀賞(かえつ有明高等学校)受賞テーマ「The Rolling Habits of Mudskippers - A research project todiscover the purpose of this rolling action-」

      「研究者」という刺激物を入れると、教員も変化する

      我々は生徒の立場を教員に置き換えた場合においても、新しい化学反応が生まれるのではないかと考えています。現場の課題感やそれをもとにしたアイデアを有する学校の教員の方々と、研究者たちが組み、両者が共に仮説を検証していくことができれば、大きな相乗効果を生み出すはずです。

      実際に大阪明星学園明星中学校・高等学校では、未来の学び舎を「教員」と「研究者」で共創していく試みの第一歩として、2017年にリバネス研究費 大阪明星学園賞を実施しました。全国の大学の若手研究者たちから、学園を実証フィールドとして実践したい研究のアイデアを集めたのです。

      集まった30件近くの研究テーマについて、議論を重ね教員の方々自身が共感し、一緒に研究をしていきたいテーマを選抜しました。2018年から動き始めたのが、下記の表の4つの共同プロジェクトです。

      英語科のA先生は研究者に加えて、アクティブラーニングの定量評価を可能にする音環境分析技術に強みをもつハイラブル株式会社とも連携。その成果を国際学会で発表しました。

      国際学会におけるポスター発表

      またB先生は研究者との連携のみならず、学園OBを巻き込んでの実験教室の企画開発をリバネスと共同で実施するなど、独自の動きも活発に起こり始めています。

      OBを巻き込んだ実験教室の様子

      このように、研究者たちとの対話によって刺激を受けた教員の方々が、学外に目を向け、自ら飛び出し、より良い教育に向けて探究していく動きが加速されています。

      また、その教員の姿勢や想いは生徒へ伝播し、生徒の主体的な行動を引き起こすことにもつながっています。C・D先生は、希少・難治性疾患の認知普及を行うNPOと連携し、様々なステークホルダー(NHK、大学医学部、製薬企業、県の難病連、希少・難治性疾患患者の方)を生徒と共に訪問しました。

      その結果を生徒が中心となってまとめ、学外にも広く発信するイベントとして、生徒らが主体的に企画運営を進めたRareDisease Day 明星2018の開催につながりました。

      Rare Disease Day 明星2018の様子

      2030年を見据えた学園づくり

      これらの成果は、決して連携した研究者の働きのみで得られたものではありません。学内に研究者という刺激物を入れていくことで、教員のアイデアを行動へと移すきっかけが生まれ、教員が自ら仮説検証を回す流れを生み出すことにつながったのです。

      日々の授業や業務のなかで抱えている課題感、試してみたいと思っているまだ煮詰まっていないプラン。それらが教員自身から研究テーマの種として提案され、研究者によってブラッシュアップされることで、実践的に検証を進めていくための研究計画ができあがっていきます。

      この取り組みは、学校教育に関わる実践的な研究を行う「研究所」としての機能を果たしているといえるのではないでしょうか。我々が考えるこの教育研究所では、自分の学校をよりよくしていくための「研究活動」を、教員が主体となり、外部の仲間を巻き込みながら推進していきます。それぞれの学校が自前の「研究所」を所有し、独自に未来の学園づくりを進めていくのです。

      教員と研究者で仮説検証を回す教育研究所

      さらに、教員が外部とのネットワークを自ら創り出していくサイクルが定着することで、教員一人ひとりが学外に未来の学園を共に考える仲間をもつことにもつながります。例えばこの取り組みを10年継続すれば、学外の仲間の数は何十倍にも拡大し、そこで生み出される仮説検証の数も同じように増えるはずです。

      この多数の仮説検証が同時多発的に進み、そこから生まれてくる知見やノウハウがネットワークを通して共有され全国に広がっていく。そんな未来を我々は思い描いています。

      教員自身で拡大させる個のネットワーク

      <お問い合わせ>

      今後の学校教育において、教育現場に企業や大学、研究機関の知識を取り込んでいくなどの新しい変化を生み出していくことにご関心等あるかたは、リバネス教育総合研究センターにお問い合わせください。

      TEL:03-5227-4198(担当:中島、中嶋)

      E-mail:ed@Lnest.jp

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